外構工事(エクステリア工事)の中で、境界(道路や隣家との境)付近を施工する際は一番神経を使います。構造物が敷地内から1mmでも外に出てしまうと、トラブルの原因になりかねないからです。
そのため、お隣さんとの境界やフェンスを設ける際、工事を行う前に測量(そくりょう:位置を正確に測る作業)を行い、正確に施工します。
ただ、境界を明らかにする塀やフェンスに土留め(土が崩れるのを防ぐ壁)の役割も兼ね備えているタイプの場合、強度を意識して造り上げる必要があります。それは、土がかぶる場所には大きな力が加わるからです。もし、これを考慮せずにブロック塀やフェンスを設けてしまうと、傾いたり崩れたりしてしまう可能性があります。
そこで、静岡県富士市天間で行ったS様邸ブロック・フェンス工事を例に挙げて施工方法を紹介します。
もくじ
ヒヤリング
S様邸の場合、道路に傾斜があり住宅の敷地との高低差が一番大きい場所で1m近い段差がありました。そのため、道路沿いの土が崩れてこないように土留めが必要になります。土留めを設けなければ、敷地内に土砂が流れてきたり、側道に設置してある側溝(そっこう)が崩れてきたりする可能性があるからです。
このとき、単に土留めをするだけでは不十分です。ブロックの上から人が落ちてしまわぬように、安全柵(フェンス)を設ける必要があります。
その旨をS様に話したところ「ぜひ、ブロックとフェンスを設置してほしいのだが、外観を損なわないように、外壁に似合うデザインのものを作成してほしい」と返答されました。
そこで、家の見栄えを意識しつつ土圧(どあつ:土が崩れようとする力)にも耐えられる高強度のブロックを使用する提案をしました。また、建物の外観にマッチするフェンスを選び、プラン・お見積書の作成に取り掛かりました。このとき、デザイン性はもちろんのこと、S様の予算内に収まる製品を選択しました。
工事着手
まず、設計図通りの高さに地面を掘りこみます。掘り下げた深さは、地表面より35㎝掘りました。なぜ35㎝掘るのかというと、ブロック施工箇所を掘ってみたところ、30㎝前後で固い地層が表れたからです。
次に、掘りこんだ土の上には、基礎砕石(きそさいせき:構造物の一番下に敷く、粒の大きさを調整された砂利のこと)を敷き込み、念入りに転圧(てんあつ:締固め専用の機械を用い、土や砂利などを固く締めること)します。
この作業により、堅く平らな面を作ることができます。
基礎砕石の転圧後、ブロック積のための鉄筋を組み立てます。このとき、ブロックの大きさが40cmのため、一つ一つのコンクリートブロックに鉄筋が絡むように40cmピッチ(間隔)でL型の鉄筋を組み上げます。ブロック1本に1本ずつ鉄筋が通ることになりブロック積みが強固なものになります。
一昔前のブロックの場合、この鉄筋が入ってないものが多く、地震で倒壊したり大きなヒビが入ったりしていました。このようなリスクを防ぐために、鉄筋はブロック積みには欠かせない鋼材です。
鉄筋組立後、ブロック積みの基礎となるコンクリートを打設(だせつ:コンクリートを流し込む作業)します。型枠(コンクリートをせき止めるための板)を組み立て、コンクリート(固まる前の生コンクリート)を流し込みます。
コンクリートが硬化したのを確認し、いよいよブロックを積みます。
このとき、強度出すためにモルタル(セメントと水と砂を適量混ぜ合わせた物)を使用します。上記の写真を見れば分かる通り、コンクリートブロックにはモルタルを詰め込むための穴がいくつか空いています。この空洞を利用して、製品同士を繋げたりベースコンクリートから出る鉄筋に絡めて結合したりします。また、この穴はフェンスの柱を挿す際にも利用できます。
ブロックを積み上げる際、傾かないように水平器(すいへいき:水平を確認する道具)や丁張(ちょうはり:構造物を設計通りの場所に設けるための目安)を使用して施工しました。
ブロックが積みあがった後は、ここでようやくフェンスの設置に取り掛かります。このとき、組み立てられたフェンスを取り付けるのではありません。まずは、フェンスの柱をモルタルにて設置し、固定されたことを確認できたらフェンス本体を設計図通りに組み立てます。
完成
フェンスが組みあがった後、確認・清掃をして完成です。S様邸のように、高低差がある境界線でブロックやフェンスを設ける際は、見栄えだけでなく、強度が非常に重要です。土留めとなるブロック積は「土砂の崩れ防止」を担い、フェンスは「安全柵」として機能するからです。
S様邸のブロック工事の場合、両者ともに重視する必要があったため、特に強度に注意して設計・施工しました。
このページを通して、正しいブロック積みの知識が一人でも多くの方に伝わり、安心で安全な街づくりが出来上がることを心から願っています。