外構工事(エクステリア工事)に限らず、高額な商品を購入するときは、まずは「お見積書」に目を通すことと思います。
そして、そこに記載されている内容を確認します。しかし、見積書に記載されている項目の中に、その道のプロでなければわからない品目が必ずあります。
外構工事の中で例を挙げるなら、「水盛り遣り方(みずもりやりかた:丁張り)」というものが存在します。これは、職人であれば理解できるものの、素人では「実際どのような作業をするのか」、あるいは「なぜそのような金額になるのか」ということは分かりません。
そこでこのページでは、「水盛り遣り方」の説明をします。
もくじ
水盛り遣り方(丁張り)とは
エクステリア工事を行う際、各業者ごとに作業工程に多少の差異があるものの、構造物を作る際に一番最初に行う作業は「水盛り遣り方(みずもりやりかた:丁張り)」です。
丁張り(ちょうはり)とは、構造物の正確な位置や高さを示す作業のことです。これを行わなければ、設計図通りに工事を行うことができません。
ここで行う作業は、造り上げる構造物の高さを出したり、正確な位置を示す目印を作成します。
ただ一昔前は、高度な測量機が無かったため、建物の水平を測るのに「水盛り」という作業を行っていました。
その方法は、まず構造物を設けたい場所に杭を打ちます。そして、ホースに水を入れて、測定したい箇所に両端のチューブを持っていき、希望する高さにマーキングします。これにより、離れていたり高低差があったりする場所であっても、高さを揃えることができます。
この作業を遣り方(丁張り)の作業時に行うため、「水盛り遣り方」という名前がつき、今でもその名残で呼ばれています。ただし、現在では高性能な測量機器があるため、それを使用することで1㎜の狂いもなく測定することができます。
ちなみに、建築(家を建てたりリフォームしたりする工事が主)では遣り方と呼び、土木(建物の外で行われる施工)では丁張りと言うことが多いです。私の経験上、丁張りと呼ぶことが多かったため、以下では統一して「丁張り」と呼ばせていただきます。
丁張りの必要性
ここまでの説明だけでは、「設計図があるのだから、丁張りは必要ないのでは」と考える人がいます。しかし、設計通りの物をを現実で再現するには、丁張りが無ければ予定通りの構造物を設けることはできません。
例えば、ブロック塀や花壇などを製作する際に、構造物を設置する位置や高さ、さらにはその大きさを示すものが必要になります。そこで、木の杭や桟(さん:木の棒・板)を組み上げて丁張りを作ります。そして、そこに水糸(みずいと:強く緊張を持たせることで直線的なラインを示す糸)を張ることで、丁張り(ちょうはり:木材を固定して作る施工の目印)が完成します。
上記のような丁張りがあれば、ブロック積みの施工前であっても仕上がりの高さや位置をイメージだけではなく、目視することができます。そのため、施工ミスを減らすことができたり施工後の変更を無くすことができたりします。
また、構造物だけではなく平らな駐車場や畑を作る整地(せいち:土砂を平坦に均すこと)にも必要になります。
上記の図のように、基準があると機械のオペレータや作業員が丁張りを目安にして施工できるようになります。その結果、仕上がりの良い作業が行われます。
一方、丁張りが無ければ見当で施工せざるを得ないため、均一な仕上がりが見込まれません。たとえ一か所ずつ高さや位置を確認していたとしても、作業効率が悪すぎるため、無駄な人件費がかかってしまいます。
このことを考慮すると、外構工事に限らず、丁張りの重要性を理解できるはずです。むしろ、これが無ければ正確な作業を行うことができないため、重要な作業工程であるといえます。
丁張りの価格について
お見積書を見る時に、気になるのはやはり金額です。
そのため、業者から提出された内訳書に「水盛り遣り方(丁張り)」と記載してあったとしても、見慣れない項目のため、不安に感じる方は多いです。また、丁張りについて知っていたとしても、素人ではそれに対する金額が適正かどうかを判断することはできません。
だからといって、丁張りの相場を調べようと思っても、正規の金額を見つけ出すことは不可能です。現場によって規模や作業条件が異なるため、それに合わせた工事費用になっているからです。
例えば、平らな地面に対して杭を何本か打つだけの簡易的なものであれば、1時間程度で終わるかもしれません。しかし、斜面や高低差がある場所に大きな構造物を作る場合、測量器具を何回も設置しながら丁張りを作成します。中には、1日では終わらないケースもあります。
そのため、金額にも大きな変動があります。また、優れた測量器具を保持している会社の場合、丁張りを設置することなく直接、測量器具にて構造物の位置や高さを確認することもあります。
このように、現場ごとの施工になってしまう作業は、金額や方法が変わってきてしまいます。そして、施工会社によっても丁張りのかけ方が異なるので、これもまた多種多様です。
参考までに、弊社(MKプランニング)では工事金額の1~5%程度を水盛り遣り方(丁張り)の費用としています。もちろん作業のしやすさで判断して適正価格を提示させていただきます。
前述の通り、構造物の施工の際には丁張りなどの目安が必ず必要になってきます。また、丁張りが組みあがっている際には、職人さんに声をかければ仕上がりの高さや位置を示してくれます。これにより、図面ではイメージしづらかった構造物の完成形が分かりやすくなります。
もし、工事のお見積書を見た時に「水盛り遣り方」又は「丁張り」という言葉を見つけた場合、このページのことを思い出してみてください。