この度、Y様より「2階の窓から出入りのできるバルコニーがほしい」と相談がありました。
ただ、単にバルコニーといっても、デザインや材質などさまざまな種類の物があります。例えば、本物のきのものがあればプラスチック樹脂などで作られた疑似木(ぎじもく:木に似せて製造されたもの)で作成された製品もあります。
しかし、Y様は「最近の住宅は、物が発達しすぎていて職人の手による温かみのあるものが少ない」と話をしてくれました。そのため、ホームセンターなどに売られている組み立てるだけの商品ではなく、今回は「職人が手作業で作る木製バルコニー」を作成しました。
このとき、「本物の木でできたバルコニーは傷む上に、年数が立つと外観が損なわれるから嫌だ」などと考える人がいます。しかし、木は人と共に年を取るため、変化する色合いが味になります。また、職人の手によって作り上げるため、疑似木では演出できない雰囲気を演出してくれます。実際、古くからあるお寺や神社を見れば分かるように、何十年、何百年と経過してもその風格は失われることはありません。
そもそも、メンテナンスを怠らなければ長い間使用できますし、増改築を容易に行うことができます。
そのため、Y様のように木製のエクステリア商材でご希望される方は多いです。
このページでは、Y様邸のバルコニー(2階のデッキテラス)新設工事を紹介します。職人が手作りで造り上げるバルコニーは、本物の木材を手作業で製材(せいざい:木の形を整えること)するので温かみがあり、希望通りのデザインにしてくれるので満足度の高いものが完成します。
もくじ
お問い合わせからご契約まで
まずは、Y様の要望を伺うため、ヒアリングを行いました。そして、「新築住宅に対して、新たにバルコニーを設置したい」という希望があったため、直ちに現場調査へ向かいました。「どのように建物とバルコニーを連結するか」「バルコニーの基礎はどのようなものにするか」など、現地を見なければ適切な提案をするのが厳しいためです。
このとき、Y様は樹脂でできた疑似木ではなく、木のバルコニーをご希望されていたため、大工さんと一緒に現地調査に向かいました。
現場確認の際のポイントは、外壁の素材、窓の高さ、新築建物の柱の位置、土の質などを調査しました。これらは、安全なバルコニーを作るためには欠かせない項目です。
Y様の建物は一般的な木造住宅であったため、バルコニーを設置する上での問題点は何もありませんでした。
しかし、唯一土質が悪かったため、基礎を一般的なものよりも強固にしなくてはいけないことに気づきました。
そこで、確認のために試掘(しくつ:土の層を確認するために穴をほること)を行ったところ、現在の土の高さから30㎝ほど掘ると、硬い層の土が出てきました。そのため、基礎の深さは現在の土の高さから30㎝以上深いところから作る必要があることが分かりました。それは、基礎の沈下を防ぐためです。
このようにして、現地調査を終えました。その後、大工さんと打合せを行い、お客様がご希望されていたデザインのバルコニーの図面を描きました。もちろん、最初に伺っていた予算内に収まるように設計しました。また、木にはいろいろな種類があり、使う場所や、用途により様々です。そのため、Y様のお宅にとってよりよい材料を大工さんに選定していただきました。
その後、プラン・お見積書を完成させ、Y様のもとへ持って行ったところ、デザイン・金額ともに満足されて晴れてご契約となりました。
工事着手
工事初日、まずはバルコニーの位置だしをしました。位置だしとは、バルコニーを設置する場所を現場で明確にする作業のことを指します。これを行うことで、建物との絡みやバルコニーの柱の位置が決まってきます。
そして、バルコニーの基礎を作成するために必要な遣り方(やりかた:木の板などを使い、構造物の位置や高さを出すために作る物)を作りました。この遣り方を基準に、バルコニーが作成されるので慎重に確認します。
遣り方が出来上がった後、これを基準に土を35㎝ほど掘ります。次に、砕石(さいせき:石を砕いて、大きさを整えたもの)
を敷き込み、硬い地層になるよう転圧(てんあつ:固く締め固めること)します。さらに、その上に均しコンクリート(ならしこんくりーと:構造物を設計通りの場所に設けるために必要なコンクリート)を流し込みます。これにより、設計通りの高さや位置に調整するのが容易になり、平らで強固なベースを造り上げることが出来ます。
均しコンクリートの上に、独立基礎(どくりつきそ:コンクリート製の箱のようなもの)を遣り方に沿って据え付けします。
その後、土を埋め戻す前にモルタル(もるたる:セメントと砂、水を適量混ぜ合わせた物)を、独立基礎の周りに流し込みます。それは、独立基礎の周りをより強固に固めることにより、バルコニーの柱のぐらつきや、沈下を防げるためです。
最後に、土を埋め戻し基礎の完成です。
基礎が完成した後は、大工さんにバトンタッチです。
柱、梁(はり:柱に対して水平方向に流す木材)、桁(けた:短辺方向はり、長辺方向をけたと呼ぶ)、手すりをつけあっという間に仕上がりました。餅は餅屋という言葉があるように、専門職の方に依頼する方がきれいな仕事を期待できる上に、結果的に安く仕上がります。
このとき、梁を外壁に打ち付ける際は、きちんと防水対策をして、最後にコーキング(目地材)を塗布しました。これを怠ってしまうと、バルコニーが建物から離れてしまう可能性があるのはもちろんのこと、建物の柱まで腐食させてしまいかねないからです。
また、柱を立てる時には正確な垂直確認も重要です。柱が斜めに立っていると、バルコニーがグラついたり倒れてしまう可能性があります。
さらには、大工さん自らバルコニーに上がり、床の軋み(きしみ)や手すりの強度の調査を行い、完璧な仕事をしてくださいました。
大工工事の完成後、防腐・防蝕・防水対策として塗装を施しました。
なお、この時に使用した塗料は、「ノンロット」という大変すぐれたものです。この塗料の成分には、以下のような効果があります。
・超撥水
・防腐
・防カビ
・防虫
・紫外線防止
これにより、腐りにくい上に色あせづらい作品に仕上がります。
また、Y様からのご希望通りの木製ということで、「塗装した後も木目が残る」仕上がりになります。
もちろん、塗装工事の際は養生(ようじょう:塗料が余分な箇所につかないように、シートやテープなどで保護すること)を徹底して行い、塗料を二回塗りしました。これを怠ってしまうと、まわりの建物を汚してしまったり、仕上がりの見栄えが悪くなってしまうからです。
最後に、塗り忘れが無いかを確認し、養生をはがせば完成です。
完成
当初の予定通り、無事にバルコニーを完成・引き渡しをすることができました。
Y様からは、「希望通りのものができた」と大変満足していただけました。
今回はY様のご要望で、木製のバルコニーを作成し、木材保護塗料を塗りました。ただ、木は時間とともに必ず湾曲したり、色あせしたりしまうものです。それはバルコニーだけでなく、木材を使ったもならば同じことが言えます。
このとき、木材そのものが傷む前に、ぜひお早めにご相談下さい。
木が傷んだり、腐食したりしてしまうと、材料の交換や作り直す必要が出てくる可能性が高くなるからです。定期的にメンテナンスを行っていれば、疑似木で作られたバルコニーやウッドデッキよりも長持ちさせることが可能です。
われわれ外構業者(エクステリア業者)は、工事だけではなくメンテナンスも大切と考えています。そのため、お客様とはその場限りの関係ではなく、一生涯サポートさせていただく思いです。
Y様、この度はご契約本当にありがとうございました。
この先も、長いお付き合いができることを心から願っております。