あなたは、「DIY」という言葉を聞くと、どんなイメージをしますか?
「簡単にできそう」「自宅の庭や家具をDIYで作成してみたい」などという声があれば、「本当に自分だけで作業を行えるのか不安」「実際にどのような作業手順で進めればいいのか分からない」という意見もあると思います。
結論から申し上げますと、DIYという言葉があるように、工事を行ったことのない素人でもしっかりとした手順で施工すれば挑戦することはできます。
ただし、危険な工事は外構工事(エクステリア工事)のプロでなければ安全に施工することはできません。危険な工事とは、高さのあるブロック塀やフェンス、カーポートなどの設置が挙げられます。
花壇を作ったり柵を設けたりするだけの作業であれば、素人でも作成できます。しかし、崩れたり壊れたりしたときに人に怪我を負わせてしまうようなことが考えられる場合、素人だけでDIYを行うのは非常に危険です。
そこで、「素人だけでは難しい」と判断される工事の場合、自らできるところ以外をプロに依頼することをお勧めします。これを、「ハーフDIY」と呼びます。これであれば、工事費用を最小限に抑えつつ、庭造りの楽しさを味わうことができるので一石二鳥です。
このページでは、東京都八王子市で行ったイラストレーターの「とやまみーや様邸」の実績を元に、弊社が行っているハーフDIYの実例を紹介します。
もくじ
1.ハーフDIY
ハーフDIYは、難しい作業と簡単な仕事をプロと素人で役割分担をして行うことを指します。
外構工事の場合、ホームセンターなどで売られているマニュアル通りに作れば製品になるものとは違い、一から施工していかなければなりません。そのため、豊富な知識や経験が無ければ質の高いエクステリアを実現することは難しくなります。
例えば、庭に砂利を敷くだけの簡単な工事であっても、素人では見栄え良く施工できません。単に小石を敷き均しているだけではなく、水勾配(みずこうばい:水を流すための傾斜)や厚みの計算、さらには防草対策も施さなければいけないからです。
このことから分かるように、適当に砂利を撒くだけではダメです。
もし、素人が砂利敷きを行ったとしても、デコボコになったり石と下の土が混ざったりして見るも無残な庭が完成してしまいます。
そこで、下地作りまでを職人に任せて残りの砂利を敷く作業だけでもあなたが実行すれば、それだけで工事費用を削減することができます。
1.1.DIYのメリットとデメリット
ただし、ハーフDIYの事例に入っていく前に、DIYの「メリット」「デメリット」を知っておく必要があります。あなたにとってDIYが適しているかどうかの判断ができるからです。
1.1.1メリット
・ 自分自身の手で家や庭を変えることができる
・ 工事金額を抑えることができる
・ 作業内容を自由に変更できる
・ 自分でメンテナンスできる
モノ作りが好きな人であれば、自らの手で庭をいじることができるDIYはお勧めです。
1.1.2デメリット
・ 本格的且つ大規模な作業を行うのが困難
・ 仕上がりが不安
・ 安全面が不確実
・ 時間がかかる
上記のようなことから、「DIY」は男性の若年層に支持されつつも、女性や高齢層の方は興味があっても挑戦することを諦めてしまいます。
そこで、前述のメリットを残しつつデメリットを無くす「ハーフDIY」であれば、女性であってもDIYを楽しむことができます。
ハーフDIYとは言葉の通り、専門的な作業をプロが行い比較的簡単な作業をあなたが施工します。これにより、本格的な工事をあなたのお庭やお宅で施工できます。
以下に「ハーフDIY」にて作成したウッドフェンスを紹介します。
2.企画
この度、弊社(MKプランニング)がいつもお世話になっている㈱イノバースの與五澤社長より建築コーディネーターとして活躍されている、「喜入時生」さんをご紹介していただきました。喜入さんはAllAboutというサイトでライターを務めているため、今回の工事の内容をサイト内でも紹介してくれています。
喜入さんからは、「最近流行りだしているハーフDIYを企画しているが、作業を行ってくれる職人がなかなか見つからない」という相談を受けました。ハーフDIYは、お客様の計画に柔軟に対応しなくてはいけないため、対応できる会社はごくわずかだからです。また、ハーフDIYは材料代や手間代での利益が減ってしまうため、多く外構業者(エクステリア業者)はハーフDIY嫌っています。
しかし、弊社ではDIYのお手伝いを行っているため、喜入さんの要望に応えることができました。
するとすぐに、「早速、いま話を進めている案件があるので手伝ってほしい」と依頼を受け、もちろん快諾しました。
さらに詳しくお話を伺ってみると、「お庭に木で作る目隠しフェンスを製作したい」とのことで、喜入さんは建築コーディネーターとして主にデザインを担当し、弊社は強度面と施工のサポートをさせていただく運びとなりました。
事前に喜入さんが現場調査した資料を拝見し、電話やメールにて打合せを行いました。そして、お客様へのプレゼンの準備をしていきます。
2.1.打合せ・施工計画
冒頭で述べた通り、この度のお客様は、イラストレーターとして活躍されている「とやまみーや」さんです。(以下みーやさん)
みーやさんのお庭は、道路に面していたりお向かいのお宅から丸見えであったりと、プライバシーを守りずらい状態でした。しかし、みーやさんから「完全に隠すのではなく家の中や庭の様子がある程度隠せるフェンスがほしい」という要望をいただきました。完璧に目隠しをしてしまうと、風通しが悪くなってしまうからです。
また、「昨今の出来合いの製品ではその後のたのしみがないから嫌だ」ということも大きな要望の一つでした。これが、みーやさんがハーフDIYを選んだ理由です。
これらを元に、実際のフェンスをイメージしていただき、大まかな位置や高さ、さらには長さを決めていきます。このとき、完成形をより明確にするために棒やメジャー(スケール)などで、正確な位置を示します。DIYと言えども、正確な寸法を決めておいた方が作業効率が良く、きれいな仕上がりになるからです。
現場での測量が終わった後は、あらかじめ喜入さんが作成しておいた資料に寸法を記入していきます。このとき、みーやさんに詳しく説明しつつ、意見も取り入れながら図面を仕上げていきました。
イラストレーターであるみーやさんは芸術家として、喜入さんは建築コーディネーターとして、そして私(当サイト代表:望月)は外構業者として三者三様の意見が飛び交いながら、設計図を完成させていきました。
2.2.お見積書提出・材料手配
設計図完成後、すぐにお見積書を提出しました。
すると、金額はもちろんのこと、プランにも納得していただきご契約となりました。
3.施工開始
工事を開始する前に、材料を手配します。今回は、柱には「杉」を、目隠しとなる板は「松」を使用しました。
3.1.材料の手配
このとき、みーやさんからの注文で「板の木目や節が良く出てて、鋸目(のこめ:木を製材する際に使用する鋸の跡のこと)をあえて残した物がいい」とのことだったので、材木屋さんにお願いしました。
また、柱の太さは三寸角(90mm角)、目隠しの板の厚さは30mmです。
さらに、フェンス基礎で使用するコンクリート枡(ます:排水を一時的に溜めておくもの)や砂、さらにはセメントも先に購入しておきます。
その一方、喜入氏にはビスや塗料、それに使用する塗装グッズを揃えていただきました。
実際に用意したものは以下の通りです。
・ 柱(杉の木)
・ 目隠しの板(松の木)
・ コンクリート枡
・ 砂、セメント
・ ビス
・ 塗装道具一式
3.2.工事着工
工事初日は、晴天に恵まれいよいよ着工となります。
施工には、「ポンちゃん」と呼ばれる女性スタッフ(素人の方)にもお手伝いをしていただきました。主に、塗装の作業を助勢していただきます。
まずは、フェンスの位置と高さを墨付け(すみつけ:近くの物に目印となるマーキングをすること)をして、基礎に取り掛かりました。
3.3.基礎の施工
施工箇所は竹が生え茂っていたため、草刈りをして土を平らに均しました。
その後、あらかじめ墨付けしていた通りにコンクリート枡を設置します。このとき、それを固定するのにモルタル(砂とセメント、水を適量混ぜ合わせた物)を使用しました。モルタルで固めることでコンクリート枡が動かなくなるばかりか、高さや位置、さらには水平を調整しやすくなるからです。
また、モルタルを多めに練り上げておき調整に使ったあまりの物を枡の周りに塗り付けます。そうすることで、より強くコンクリート枡を固定することができます。
なお、セメントの硬化を待つ間、他の方たちには使用する木材の塗装をしてもらいました。
3.4.木材の塗装
今回使った塗料は、「キシラデコール」という商品名の油性木材保護塗料です。また、色は白で2回塗りました。
まずは、塗料でコンクリートを汚さぬように、ブルーシートを敷いてから材料を降ろします。
また、すぐに塗れるように、柱と板を設計通りの寸法に切断しておき、木材を塗りやすいように配置しました。
このとき、木の端材(はざい:材料のいらない部分)を試し塗り用として用意しておきます。塗り方や仕上がりの色を、確かめることができるようにするためです。
そして、塗料用のバケツにキシラデコール(油性木材保護塗料)を良く振ってから投入します。このとき、良く振らずに使ってしまうと材料が沈殿して本来の色がでなくなってしまうので気を付けます。
次に、塗料を刷毛(ハケ)やローラーにて塗っていきます。最近では、コテ刷毛という幅広の道具があり、広いところを塗る際には便利なものがあります。今回はそれを使用しました。(上写真で喜入さんが使っているもの)
木材により多く浸透するものもあるので、加減しながら塗っていきます。その際、色の加減がわかりずらいと思うので、先ほど用意した木の端材で試し塗りをした方がベストです。
なお、今回先に塗装した理由は、施工個所が高所で作業しずらいからです。また木材が重なるところは、後からだと塗りずらいです。
ただし、作業がしやすい場所であればフェンス組立後に、塗装しても構いません。
3.5.枡に柱を立てる
皆さんが板を塗っている間に、私は柱を立てました。
まずは、枡に位置、高さ、さらには柱のピッチ(間隔)の墨付け(しるしを付けること)をします。また、柱の位置は仕上がりにも影響してくるため慎重に行います。今回のウッドフェンスには窓がつくため、その位置も考慮して柱の場所を設定します。
墨付けが終わった後、コンクリート枡に柱を指して隙間にモルタルを流し込んで固定していきます。
このとき、柱の垂直や水平、全ての柱が真っ直ぐ一直線になっているかを確認します。
そして、この確認が終わった後は、動かないように木材を使用して固定して、初日の作業はここで終わりました。
ただ、もう少し作業をしたかったのですが、今回使用する材料は30mmと厚く重いため、モルタルをある程度硬化させないと柱や枡が動く可能性があったので終了しました。
3.6.フェンスの板張り
後日、柱や基礎ともにモルタルが硬化したのを確認し、作業を開始しました。
この日一番最初の作業は、柱に目隠しの板を設置する高さの墨付けを行いました。このとき、目隠し部分(フェンス上部)は、板の厚みと木が水分を含んで膨らむことを考慮し、5mmの隙間を開けて書いていきます。そして、風通し部分(フェンス下部)は、板の厚みと空き寸法50mmをマーキングしました。
その後、板を印に合わせて設置していきます。ちなみに、固定する際に、板の下端(したば:物の一番下)に仮で釘を打ち付け、その上に目隠しの板を乗せると作業が楽です。
また、板を設置する時は、インパクトドライバーという電動ドリルを用いて、75mmの木ネジを打ち込みました。このとき、縦方向のネジの位置が等間隔になるように施工します。
3.7.窓枠・棚板の設置
目隠しフェンスとなる板を張り付けた後は、窓枠を取り付けます。枠に使う木材は、半貫(はんぬき)というホームセンターでも購入できる物を使用しました。サイズは、幅45mm×厚み15mm程度の材木です。
これを、窓の寸法に合わせてカットして、みーやさん宅の倉庫に眠っていた緑の塗料で塗装しました。
塗装完了後、45mmのビス(木ネジ)で打ち込みます。
次に、目隠しの板と小窓だけでは寂しいため、小物を置くことができるように棚板を設置しました。
板を支えるのに必要な棚板受け金物は、喜入さんが事前購入して用意してくれました。
棚の位置をみーやさんに決めていただき、土台となる金物を水平に設置します。その金物に、木材保護塗料を塗った板を取り付けて完成です。
3.8.防草コンクリート
フェンス基礎を設置した箇所は、竹や雑草が多く生えていました。手入れをしにくい場所であったため、基礎の補強も兼ねて防草コンクリートを施工しました。
まず、コンクリート枡の周りにワイヤーメッシュという細い鉄筋を網目状に組み込んだ物を設置しました。これにより、コンクリートがより強力になり、ひび割れしにくくなります。
次に、コンクリートの仕上がりの高さを墨付けします。このとき、水が溜まらぬように水勾配(みずこうばい:水が流れるようにするための傾斜のこと。一般的には100分の1程度)をつけました。
なお、今回はDIYということもあり、コンクリートは工場に発注するのではなく、現場で混ぜ合わせて作りました。また、使用するコンクリートの量が少なかったため、これを取り寄せると割増料金が取られてしまうこともあります。
手順としては、砂と砂利とセメント、水を混ぜ合わせコンクリートを作ります。この方法は、「コンクリートの作り方」で紹介しています。
それを、先ほど墨付けした印に合わせて流し込んでいき、金鏝(かなこて:セメントをならす道具)にてきれいに平らにしていきました。
すべてコンクリートを詰め終わったら完成です。
4.完成
最後に、フェンスの塗装状況を確認して、色むらがあったり剥がれたりしているところは再塗装します。そして、周りの清掃・片付けをしてお引き渡しとなりました。
完成したフェンスを見て、お施主様であるみーやさんからは「とっても素敵な物ができた」「この地区で一番のお庭ができた」「自分でも楽しんで作業ができた」と数々の嬉しいお言葉をいただきました。
後日、より素敵になったお庭で、さっそくバーベキューをしました。ありがたいことに、工事のお礼ということで私も招待してもらい、充実したひと時を過ごすことができました。
お客様と一つになって造り上げた空間で開かれたバーベキューは、とても心地よいものでした。目隠しもできているので、人目も気にせず楽しめます。
ハーフDIYにより、世界に一つだけの素敵な目隠しフェンスをお施主様であるみーやさん自身の手で造り上げることができたため、大満足の施工になりました。
まとめ
今回のフェンス工事は、素人だけで行うDIYのみでは、作業・強度ともに難しい工事でした。特に、女性の場合重たい木材やコンクリートを運ぶのは大変です。
しかし、プロの手を加えることにより、このような本格的な工事を一丸となって作業することができます。
実は、外構工事の中には、素人の方でも無理なくできる方法がたくさんあります。それらを行うことにより、「工事金額の減額」「庭を自分で作る喜び」「作業の意味」を得ることができます。
また、みーやさんは「最近のお宅は、完璧すぎる外構で育てる楽しみが無い」と言われていました。自分自身で庭を作る喜びを知っている方は、いつ見ても美観を保ったお庭になっています。
その素敵なお庭を「ハーフDIY」により、さらに見た目よく機能性よくすることができました。
喜入さんをはじめとして、素敵なお庭づくりのお手伝いをさせてくれたみーやさんには心から感謝しています。ポンちゃんも一生懸命手伝っていただき、非常に助かりました。ありがとうございます。
いつでも駆けつけるので、些細なことでもご相談下さい。